忘却曲線とは


 忘却曲線とは、記憶したことが忘れられてゆく過程を示した曲線のことで、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスによって明らかにされました。エビングハウスの実験によると、何かを新たに学習した時点での記憶率を 100% とした場合、その記憶率は 20 分後には 58%、1 時間後には 44%、1 日後には 26% となってしまいます。つまり、記憶は 1 日の間に急速に失われていく性質を持っているのです。しかしその記憶を思い出し、再び記憶し直すことで、その記憶の低下の度合いは以前よりもゆるやかになっていきます。その作業を繰り返すことにより、記憶は徐々に強化されていきますので、復習の必要性も減少していきます。 このような記憶のメカニズムを最大限考慮して Parthenon は作成されています。エビングハウスの実験には無意味綴り(※1)が用いられましたが、単語の暗記等においてもこの忘却曲線の理論は有効であると類推され、実際に数多くのユーザーの方々からご好評をいただいております。「何回覚えても忘れてしまう」、「暗記作業は辛くて苦手だ」、そのような不満をお持ちの方は、是非この Parthenon をお試しください。











 Parthenon の実際の画面による説明(1)

 Parthenon の実際の画面による説明(2)

 Parthenon の実際の画面による説明(3)

Parthenon の特徴について



【Parthenon の特徴 @】
―― 必ずしも集中力を高めて頑張る必要がありません

 cat という単語を耳にすれば、ほとんどの人がネコのイメージを瞬時に思い浮かべることができます。しかし cat という単語を記憶するために、集中力を高めて頑張ったという人はいないでしょう。なぜなら cat という単語は、頻繁に耳にすることによって自然に記憶に定着し、維持されてきたからです。そのような自然な語彙力の獲得過程を考慮し、定期的に単語に接することで記憶を定着させるというコンセプトに基づいて開発されたのが Parthenon です。Parthenon では単語の正解率に応じて適切な忘却曲線が適用され、最適なタイミングで再出題がなされますので、単語の暗記に際して過剰に集中力を高める必要はありません。


【Parthenon の特徴 A】
―― 効率が良い

 Parthenon は忘却曲線に基づいた出題をするだけでなく、記憶の過程(※2)やレミニセンス(※3)の効果を考慮に入れて設計されています。  まず、短期記憶(※4)と長期記憶(※5)の各段階に応じて最適な出題がなされるよう、3 つのステージ(※6)が用意されています。短期記憶の段階であるステージ 1 においては、後続の記憶が先行の記憶を劣化させる逆向抑制(※7)のデメリットを最小限にとどめることを重視し、「問数(出題数)」を基準として出題がなされます(認知科学での「7±2」というキーワードが示すように、短期記憶領域(ワーキングメモリー)における記憶素材の数には限界があります)。初めてインプットされた記憶情報が 20 秒程度で急速に消失されるという実験結果や、ワード=ホヴランド現象(※8)などを考慮すれば、問数ではなく秒数を基準にするという方法もありますが、Parthenon のステージ 1 では問数を基準として採用しました。  しかし、短期記憶から長期記憶への移行段階であるステージ 2 においては、忘却曲線本来の時間軸を基準とした出題がなされます(バラード=ウィリアムズ現象(※9)や各種実験で提出された数値なども参考にしつつ忘却曲線を設定しています)。 このステージ 2 において、海馬(※10)による長期記憶への転送がなされ、記憶がより確かなものとなっていきます。そして、長期記憶への定着を永続的なものとするため、最終段階であるステージ 3 においては、ステージ 1 と 2 における成績に応じて 1 〜 2 年に 1 回程度の出題がなされます。  Parthenon では短期間、または特定の日時に大量の記憶を行う集中法(※11)ではなく、分散法 (※12)に基づく学習を想定しています。この分散法により、短期記憶領域にある雑多な記憶項目の干渉による記憶力の抑制を防ぎ、学習の効率を高めることが可能となります。数多くのユーザーの方々から、「短期間にもっとたくさんの単語を勉強したい」というご要望をいただくのですが、たくさんの単語を効率的に長期記憶として定着させるには、どうしても長期的なスパンが必要となります。数千もの単語を記憶するということは、それほど簡単なことではありません。並々ならぬ熱意をもってすれば、1ヶ月で1万語を記憶することも不可能ではありませんが、Parthenon ではそのような特別な熱意のある方は想定しておらず、普通の学習者の方々が無理のないペースで語彙力を獲得されることを主眼としております。


【Parthenon の特徴 B】
―― 終わらない

 数千単位の膨大な単語を長期的に記憶することは困難ですが、それには少なくとも二つの方途があります。一つは英語を使わざるをえない環境に身を置くこと。そしてもう一つは、忘れないように常に努力を続けることです。しかし、英語を日常的に使い続けられる環境にある学習者は少数派だと思いますので、やはり語彙力の維持にはたゆまぬ努力が必要となります。英語や語学が好きな学習者ならば、それは大きな問題にはなりませんが、一般的な学習者にとっては、この継続的な努力と、それに要する膨大な時間に嫌気が差してしまうのではないでしょうか。  そのような学習者にとっての理想の教材とは、語彙力を維持するためのたゆまぬ努力を「最小限の時間で確実にサポートしてくれるもの」ではないでしょうか。この考えに基づいて作られた Parthenon には「終わり」がありません。すべての単語の習熟レベルが十分に高まった後も、忘却曲線に基づいて「最小限の頻度」かつ「最適なタイミング」で出題され続けますので、絶対に忘れることがないのです。勉強を続けていれば忘れないのは当然のことですが、Parthenon を利用することによってその労力を最小限に抑えることができます。Parthenon による短時間の学習で、数千の単語を確実に維持していくことができるでしょう。
 ※忘却曲線に基づく出題は日々減少していきますので、最終的には毎日学習する必要はなくなります。例えば、3000 語収録の学習ファイルの場合、最終的には 1 日平均 10 問程度の出題数になります。つまり、Parthenon を毎月 2 〜 3 回起動すれば十分という状態になります。


【Parthenon の特徴 C】
―― 実践的な語彙力は獲得できません

 Parthenon で習得できるのは、あくまで知識としての語彙力です。Parthenon で効率よく膨大な数の単語を記憶しつつ、その記憶を武器として実際の英文の多読や多聴をこなしていきましょう。単語の使われる場面や、使われ方、コロケーション(どのような語と一緒に使われるのか)などを知るには、実際の英語に接することが大切です。丸暗記をしただけの語彙力は、スポーツ選手における基礎体力のようなものにすぎません。良い選手になるには、基礎体力だけではなく実戦経験も必要であるのと同様、暗記した語彙力も実践の場で活用していくことが大切です。Parthenon だけに頼らず、バランスの良い学習を心がけることで、実践的な英語力を身に付けていきましょう。 Parthenon で語彙力(基礎体力)を鍛えておけば、実践の場でもストレスなく効率的に力を伸ばしていくことできるでしょう。



※1: 無意味綴り ・・・ 子音、母音、子音の3文字の意味のない組み合わせ(gof、vim、neb など)
※2: 記憶の過程 ・・・ 「記銘」 ⇒ 「保持」 ⇒ 「想起」 ⇒ 「定着・維持・応用」
    ・記銘: 外部の刺激が持つ情報を意味に変換し、記憶として取り込むこと。情報を覚える過程。
    ・保持: 符号化したものを保存しておくこと。覚えた情報を忘れないようにする過程。
    ・想起: 保存されていた記憶を思い出すこと。覚えている情報から必要なものを取り出す過程。
※3: レミニセンス ・・・ 一定の時間が経過した後、記憶直後よりも記憶の再生成績がよくなる現象。
※4: 短期記憶 ・・・ 表層脳である大脳新皮質の側頭葉言語野に貯蔵される。短期記憶の容量には限度があり、記憶の想起がなされない場合は消滅する。
※5: 長期記憶 ・・・ 新皮質より奥の大脳辺縁系(古皮質)に貯蔵される永続的な記憶。容量はほぼ無限。赤ちゃんの頃の記憶がないのは、この長期記憶のシステムが幼少期は未発達であるから。
※6: ステージ 1・2・3 ・・・ Parthenon で出題される単語は習熟レベルに応じて 3 つの異なるステージに配属されます。各段階において最適な出題システムが適用されます。
※7: 逆向抑制 ・・・ 記憶したことを想起しようとする際に、その記憶以後の記憶が干渉・妨害すること。
※8: ワード=ホヴランド現象 ・・・ 無意味な記憶材料で数分後に出現するレミニセンス。
※9: バラード=ウィリアムズ現象 ・・・ 有意味な記憶材料で数日後に出現するレミニセンス。
※10: 海馬 ・・・ 記憶をつかさどる脳の部位。短期記憶はまず海馬に貯蔵される。その短期記憶を長期記憶へ転送するか否かの判断は、通常数週間で下される。
※11: 集中法 ・・・ 時間を置かずに学習を行う方法。
※12: 分散法 ・・・ 時間を置いて学習を行う方法。